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ケロイドの治療

ケロイドは皮膚が盛り上がり、赤みを持っているものを言います。狭義には何ら原因なく、もしくは虫さされ・注射・ニキビなど微細な皮膚損傷にて生じたものを言いますが、通常は手術跡などで発生した、症状は同じもの(肥厚性瘢痕というもの)も含みます。赤みがない、ただ傷跡が汚いというものは、単に瘢痕といいます。これは今回の治療内容には含まれません(最後の方にこの場合の治療法も記載はしておきます)。


ケロイドの治療は今だ完全なものはなく、今でも多くの施設で様々な試みがなされています。私自身は大学病院時代にこれに関する研究をしていたこともあり、逆に安易に治療に手を出せないことは十分に理解しています。しかし、少しでも改善できないか、色々と模索するうちに、ある程度の結果が出る方法を見つけてきました。まだ完全とはいきませんが、かなりの確率で結果を出せるようになりました。もちろん跡形なく消すことはできません。あくまで、盛り上がりを減らし、赤い色を取ることが中心となります。しかし、それさえも長期的には難しく、特に真性と言われる肩・胸のものは圧迫・シリコンシート・ステロイド注射・ステロイドテープ・リザベン内服など、どれも不十分であることは患者さんならご存じだと思います。これから述べる方法はまだ学会(日本形成外科学会)で発表しただけであり、広くは知られておりません。治療に使う機器が新しく、長期的に効果が持続するのかどうかも分かっていません。ただ、この数年間実施してみて効果は継続され、悪化も見られていません。この点は十分にご留意下さい。

では、まずはじめにケロイドができる原因についてお話をします。一般向けですので、専門家から見ると少し違うよという指摘もあるかもしれません。しかし、原因がまだ完全に分かっていない現在、できるだけ分かりやすく記載することを心がけました。少し長くなるので、興味のない方は以下の枠で囲まれた部分は飛ばしてください。ただ、治療を本気で受けたいと思う方はしっかりと読んでください。
*茶色は専門用語ゆえ、読み飛ばして結構です。赤色は重要な単語です。

傷が治るというのは、皮膚の真皮という下層の部分のコラーゲンが接着剤の代わりをして、傷口をくっつけ、約半年ほどで強固になるまでの過程を全て含みます。例えば怪我をして1週間で抜糸をしたら傷が治った訳ではありません。まだ接着剤が乾いていない状態で、ちょっとした力で開いてしまいます。人間はこれを防ぐために張力が働くとコラーゲンを増加させ、傷が開かないようにする機能があります。つまり約半年の間は、傷跡は変化しうるのです。よくお腹の傷が白い幅広い跡として目立っているのを見たことがあると思います。抜糸直後から白い訳ではありません。呼吸などの張力で時間をかけて引っ張られ、拡がっていったのです。白い色はコラーゲンが沢山詰まって、張力に抵抗していった跡なのです。接着剤が増えていた過程と考えれば分かりやすいでしょう。もちろん傷が治る初期は炎症が起こり赤くなります。治り始めは痛がゆかったりしますよね。ケロイドはこれが持続している状態です。傷がくっつこうとしているのに張力がかかり、なかなか治る過程が進みません。通常は皮膚表面の表皮(基底細胞)がしっかりとでき上がり(傷が治ったばかりの薄い膜と思ってください)、血管の炎症が収まり、新しい血管が増えないようになります。ところが何らかの機転でこれらがうまくいかないと、各細胞(皮膚・血液を構成する表皮細胞・線維芽細胞・血管内皮細胞・白血球・血小板・リンパ球・マストセル・ラングハンス細胞など)間はサイトカインという物質を互いに放出しあって複雑に制御されているために、どこかに異常があると、その細胞からまだ傷が治ってない、ヘルプ!というメッセージ(サイトカイン)が出て、線維芽細胞(コラーゲンを作る細胞)が活発になって、皮膚の接着剤たるコラーゲンをいつまでも出し続けます(これは直接であったり、間接的であったりします)。手術の傷跡の場合は張力により皮膚が裂けようとするのが、悪化要因です。もちろん傷が化膿すると傷跡が汚くなるのも、同様です。よく整形外科などの傷跡で肘や膝などはケロイド状になりますが、これは常に動く関節部ゆえ、傷が引っ張られた状態が続き、どんどん接着剤のコラーゲンは増えるし、これが起こるとサイトカインが沢山放出され、逆に血管が増えたり、炎症が長引いたりするという悪循環になります。しかし長い時間かかって張力が十分になれば跡は残りますが、赤みは少しずつ自然に収まっていくのです。本当の意味での真性ケロイドは、怪我など傷の既往がありません(通常手術跡などのケロイドは肥厚性瘢痕と言います)。それなのになぜケロイドになるのかは、完全には分かっていませんが、上記のようなサイトカインという物質が異常に放出され、正常ではあり得ないような刺激が起こり、自己コントロールが効かない、もしくは表皮基底細胞の接着(基底膜とかコネキシン、ヘミデスモゾームなどに由来)が弱く、すぐ力負けする、コラーゲンそのものが異常、血管の新生が止まらない(血管内皮細胞異常)など様々な要因・体質が考えられています。すなわち真性ケロイドは目に見えないような微細な傷でも生じると、体が異常な治癒の仕方をしてしまうものなのです。over-healingといって過剰な治癒・異常な幼若コラーゲンの増加・ムコ多糖類の増加とも表現されることがあります。圧迫などの治療はこれを安静化するためであり、また虚血といって血流を過度になくして細胞の活動を止めてしまう目的とも言われています。ステロイドの作用は分かっていませんが、ステロイドは体の炎症を強力に抑えることから、傷の治る途中の炎症を無理矢理抑え、治癒の終焉を早める効果、線維芽細胞の活動性を抑える、皮膚の萎縮効果などが考えられています。

keloidが生じやすい場所は、胸中央、肩・肘・膝の皮膚の伸びる側(伸側と言います)、顎の角(咬む動きが影響します)、耳たぶ(ピアスなどで異物・アレルギーが原因となることもあります)、背中(特に肩甲骨上)で、もちろんここの傷跡はより目立ちます。また手術跡では婦人科の手術(お腹)、耳鼻科の手術(甲状腺)、心臓の手術(胸の中央)、それ以外どこでも起こりますが、その場合は体質が大きく影響します。

では、当院の治療法ですが、まず上述されたステロイドの注射は行います。これはやはり即効性がありますし、傷が縮みやすいものです。しかしステロイドはホルモンですから長期間、連続投与は限界がありますし、使用可能な量も限られます。ここで同日にスムースビームというレーザーを照射します。これは皮膚表面を破壊せずに、真皮部分のコラーゲンを破壊します。もちろん完全な破壊ではなく、張力に影響が出るほどではありません。しかし、皮膚内で一番線維芽細胞が活発な真皮上層(乳頭層)を主に破壊します。表皮が壊れればそこで傷の修復が起こり、ケロイドが進行しますが、表皮は正常ですし、血管も正常ですから、何らかの理由で先程述べたサイトカインのコントロールがうまくいくのです。これはしわの治療などで肌がふっくらし、コラーゲンが正常化することから得た結果を利用したものですが、傷を残さずしわを取るという治療が発展してきた賜物です。これを3〜4週に1回、大体3〜4回実施します。この段階で皮膚は軟らかくなりますし、赤みも減少し、平らになります。ステロイド単独治療でも同じことは起こりますが、皮膚の柔らかさや萎縮が軽度なことなど明らかな違いがあります。また落ち着かせて固めてしまうために長期結果でステロイドを連用しなくて済む印象があります。
落ち着いてきたら、後はダイレーザー(色素レーザー)と言って血管に反応するレーザーを用います。これも以前より一部の形成外科で検討されているものですが、血管を潰し、赤みをかなり引かせることで、炎症を強制終了させようという狙いです。これとスムースビームを同日照射します。この場合は皮膚表面が1〜2週間紫から赤黒くなります。表皮が傷んでいるのでスムースビームにて大丈夫なのか気になると思いますが、血管も破壊しており、また内出血のようなものゆえ悪化することはないでしょう。これを月に一度実施し、状態を見て小休止、経過を見ます。
これらでコントロールを行い、この1年間、良好な結果が得られています。但し、この方法はまだ学会でも広くは認知されておらず、おそらく日本では当院だけが実施しています。まだ不明な点もありますが、幸いなことに悪化した例はありません。但し、完全にケロイドが消えることはなく、赤みが引き、平らになり、かゆみなどの症状が消えるものとお考え下さい。長期になると、再発することもあります。
レーザー理論としては他の美容外科医よりは詳しい自負があること、ケロイドの基礎的研究をしていた実績があることが今回の治療方針の支えです。学会で発表するのは、もう大学の一員ではないので出世する必要がないのですが、医学者としての努めと思っています。悪い表現をすれば趣味のようなものですが.....、しかし患者さんには必ずや役に立つ情報になり得ると思っています。

費用は上記の方法は1回1万円です。もちろん範囲により費用は少し異なりますが、通常の数センチのケロイドいくつかならこの費用で実施します(レーザーのみでも、何種類か組み合わせても、治療費は同じとなるよう、最適な方法の選択が費用で左右されないように固定です)。

なお、ケロイドではない、傷跡が盛り上がっている状態の場合には、まず炭酸ガスレーザーというものでその部分を削り、擦り傷のようにします。その後、皮膚が出来上がってきて、赤みが生じた状況で、予防的に上述のスムースビームを照射したり、回数を制限してステロイドの注射を実施しています。この場合は削る費用は別枠です。ケースバイケースですので診てみないと分かりませんが、通常の数センチ程度の線状傷なら数万円です。

以上長くなりましたが、お分かり頂けましたでしょうか。

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