肝斑の治療:
ピコトーニング・レーザートーニングを主として
最近、肝斑という言葉が一般にも知られるようになりました。
肝斑というのは中年期以降に発生する、両頬に刷毛で塗ったような茶色い色素が発生する病態です。通常のシミのように輪郭ははっきりしませんが、目の際に発生せず、下瞼の縁から1~2センチ離れた下方を中心として広く生じるものです。時に点状に両頬に多発するADM(後天性両側性の真皮メラノーシス)と言われるアザ(25歳頃を中心に発生:通常のレーザー治療数回で改善)との区別が難しい場合もありますが、ほぼ外見上で診断できる疾患です。
肝斑の治療は従来非常に難しく、なかなか良い結果を得ることが出来ませんでした。特に通常のシミ取りレーザー(Qスイッチレーザーやルビーレーザー)などでは照射によってかえって悪化することが殆どであり、診断の誤りが大きく影響するものです。
従来、美白剤を塗ったり、トラネキサム酸(トランシーノ、トランサミン)、ビタミンC等の内服やケミカルピーリングが主として用いられてきました。これのみで効果を得ることも多いのですが、不十分であったり無効例も多く、その治療に関しては絶対的なものはありません。
現在、低出力のレーザー照射(カサブタを作らない)による治療:レーザートーニングという手法が肝斑治療の選択肢として新たに登場しました。この方法は、刺激すると濃くなってしまう反応性のシミとも言える肝斑に対し、複数回のマイルドな治療で徐々にメラニンを排除していくレーザー照射法で、痛みも軽度で日常生活も制限することなく治療可能です。この手法や電気穿孔法による美白剤の導入治療、その他従来の手法を組み合わせることによって、肝斑のコントロ−ルが出来るようになってきました。
但し、肝斑は主として女性に発生する様々な要因による反応性の色素沈着です。抑えることは出来ても完治は出来ません。治療後もケアを正しく行い、悪化させないように気をつける必要があります。糖尿病や高血圧と同じように体質に依存するものでもあるのです。もちろん一部は過剰な日焼け(男性含め)、肌の擦りすぎ、女性ホルモンバランスの関係(妊娠やストレスなど)にも大きな影響を受けます。それらを総合的に管理しながら治療を進めていく必要があります。
肝斑
では、具体的な治療についてご説明をします。
まず受診頂いた時には、肌を拡大スコープなどを用いながら診断し、肝斑かどうかの判断をします。生活習慣、スキンケアなどをお伺いし、誤っている部分を指導もした上で、治療を計画します。トラネキサム酸の飲み薬で改善するケースもあるので、これと美白剤の塗り薬をまず第一に考えます。その上で電気穿孔法による美白剤導入(メソアクティス、アクシダーム)や、ケミカルピーリングによる皮膚のターンオーバー(代謝)を促進させる方法を選択肢としつつ、レーザートーニングによる治療の適否を判断します。レーザートーニングは1ヶ月に1回程度(診察の上での判断によっては2回)の通院を要しますので、これが可能かどうかもご本人と相談します。急ぐ場合、より良い結果を求める場合などには様々な方法を組み合わせると効率が良いでしょう。
レーザートーニング治療の際には、トラネキサム酸(飲み薬)注射液を薄めたものを皮膚のごく表面に注射するメソセラピーという手法を併用することも行います。注射というと怖がる方もいると思いますが、ごく浅い層であり出血も殆どなく、痛みも爪楊枝でチクチクされているような程度です。フランスで生まれた手法であり、肌表面の改善を促すものですし、トラネキサム酸をダイレクトに効かせるという意味では併用をお勧めしています(レーザートーニング治療費に含む)。
ピコレーザーPicoway
レーザートーニングですが、当院で用いているレーザーはピコレーザーPicowayという機種です。通常のトーニングで用いられるQスイッチNd:YAGレーザーと異なり、非常に短い時間(ピコ秒)でレーザー照射が終わります。これはレーザー光が熱に変わらず、レーザーの光音響効果という作用でメラニンを選択的に抑制するという利点があります。よって、メラニン細胞へのダメージが少なく、悪化を生じにくく、かつ少ない回数で効果が出るため、世界的には徐々に浸透してきている手法です。最近ではピコトーニングという俗称で呼ばれています。Qスイッチレーザーを用いるトーニングのメリットは少なくなり、やや時代遅れの感も出てきており、当院では専らピコトーニングをおこなっています。
通常3回目から効果発現することが多いでしょう。6~8回治療が標準的な回数です。
ピコトーニング(レーザートーニング)治療費は1回あたり12000円+消費税(トラネキサム酸注射含む)です。